№200 消費税の給付付き税額控除
2025.10.04
今回は№198の続きです。
単年度の所得で比較すると、高所得者よりも低所得者の方が、可処分所得に占める消費税の負担割合が高くなります。これを消費税の逆進性といいます。
消費税の逆進性を、消費税の枠組みの中だけで解決する方法が軽減税率の適用です。他方、低所得者の消費税負担増となる分を所得税や住民税から控除することにより解決する方法が給付付き税額控除です。
2012年当時の民主党は、低所得者の消費税負担の軽減策として給付付き税額控除を提唱しましたが、政権を奪取した自由民主党は軽減税率で逆進性を解決しようと考え、消費税を単一税率から複数税率に変更しました。現在、標準税率10%、軽減税率8%の複数税率となっています。
本日(2025.10.4)、自由民主党の総裁に高市早苗氏が選ばれましたが、彼女は給付付き税額控除を推奨しています。立憲民主党も引き続き、給付付き税額控除を提唱しています。
今回は、消費税の給付付き税額控除について解説したいと思います。
(1)給付付き税額控除の考え方
軽減税率とは、標準税率よりも低い税率を設けることです。食料品などを軽減税率にすることで低所得者の負担を軽減するという考え方です。
図表1 国税庁作成:よくわかる消費税軽減税率制度

※一体資産については次回のブログ№201で詳述します。
一方、給付付き税額控除とは、所得税から控除した税額がマイナスになった場合には給付するという考え方です。
具体的な方法として、消費者は店頭でいったん消費税を支払いますが、その後、消費税の一部は所得税から税額控除され、所得税から控除しきれなかった残りの消費税が税務当局から還付されるという方法です。
要するに、「給付付き税額控除」とは、税額控除による税額軽減効果を十分に享受できない低所得者に対して、税額控除できない分を給付するという制度です。
消費税を負担した低所得者は、給付付き税額控除により給付を受けることができるので、消費税の負担を相殺することになり、所得税と消費税を合計した税負担率が低所得者ほど低くなります。

(資料:ニッセイ基礎研究所作成)
(2)給付付き税額控除の長所
- 軽減税率と比較して、給付付き税額控除の長所は、軽減税率のように適用範囲を特定することなく、全ての業種が対象となるので政治的な利権が発生しないことです。
- また、高所得者にも恩恵がある軽減税率と違い、給付付き税額控除は低所得者のみが対象となるので、軽減税率と比べて財源が少なくて済みます。
- さらに、軽減税率の場合は事業者の事務負担・事務コストが増加しますが、給付付き税額控除の場合は事業者の負担がありません。
(3)給付付き税額控除の課題
- 給付付き税額控除の最大の課題は、低所得者の世帯を正確に把握するマイナンバー管理システムを構築する必要があることです。
- また、税額控除や給付を受けるためには、所得税の確定申告が必要となりますが、納税者の確定申告に基づき税額控除・給付を実施すれば不正受給の可能性があります。
- さらに、給付業務を担当する税務当局に多大な事務負担と事務コストが生じます。
- そして、消費税が社会保障給付の財源であることを前提にすれば、給付付き税額控除を設計していく上では、税と社会保障給付を一体的に考えていく必要があります。行政効率を高めるためには、税と社会保険料の徴収の一元化が重要な課題となります。
- 税と社会保険料の徴収の一元化とは、歳入庁を創設して、国税庁の国税徴収業務と、日本年金機構などが担う社会保険料徴収業務を統合する構想です。
(完)