№202 国税徴収法第141条と債権差押通知書

2025.12.01

税務署長、都道府県知事、市町村長等(以下「行政庁」という。)から「国税徴収法第141条に基づく照会(依頼)」という内容の書面が送付され、対象者として記載された者に対する買掛金等の債務の有無、支払額(源泉所得税額を含む)、最終の支払年月日、支払方法、振込先金融機関名と口座番号等の回答を求められる場合があります。

この依頼に回答すべきか質問があったので解説したいと思います。

1.国税徴収法第141条に基づく照会

国税徴収法第141条(※1)に基づく照会は記載された取引先に税金等の滞納があり、徴収職員が滞納処分のため滞納者の財産を調査する必要があるときに、その必要と認められる範囲内において質問し回答を求めるものです。

正式な書面での照会は、行政庁の質問検査権の行使にあたります。回答を拒否した場合、虚偽の回答をした場合には、法第188条(※2)及び法第190条(※3)の規定による罰則の適用があるので、原則として回答する義務があります。

また、地方税に係る滞納処分に関する検査拒否等の罪として、地方税法第333条第1項(市町村民税)、同法第375条(固定資産税)、同法第463条の29(軽自動車税)等にも同様の罰則規定があります。

法第141条の「財産に関する帳簿書類…その他の物件」とは、第1項1号から4号までに掲げる者の有する金銭出納帳、売掛帳、買掛帳、土地家屋等の賃貸借契約書、預金台帳、売買契約書、株主名簿、出資者名簿等これらの者の債権若しくは債務又は財産の状況等を明らかにするため必要と認められる一切の帳簿書類その他の物件(国外も含む)をいいます(国税徴収法基本通達、第5章第6節第2款 財産の調査)。

なお、記載された当該取引先には照会があった旨を伝え、滞納の事実や納付状況を確認することが望ましいと思われます。

2.債権差押通知書

法第141条に基づく照会の回答を受けて、行政庁は、買掛金等の債務の支払義務者に対し「債権差押通知書」を配達証明で送付し、当該債務を滞納者に支払わず、行政庁に直接支払うよう通知します。

通知書を受け取った者は、

  • 差し押さえられた債権の金額、支払い期限、支払先(行政庁の担当部署)を確認します。
  • 通知内容に従い、指定された行政庁の口座に直接支払います。

この「債権差押通知書」を受けた後に、元来の請求者である取引先に支払ってしまうと、その支払いは「二重払い」になってしまいますので注意してください(法第62条※4)。

(※1) 国税徴収法第141条(徴収職員の滞納処分に関する調査に係る質問検査権)

徴収職員は、滞納処分のため滞納者の財産を調査する必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、次に掲げる者に質問し、その者の財産に関する帳簿書類…その他の物件を検査し、又は当該物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができる。

一 滞納者

二 滞納者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由がある第三者

三 滞納者に対し債権若しくは債務があつた、若しくはあると認めるに足りる相当の理由がある者又は滞納者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者

四 滞納者が株主又は出資者である法人

(※2) 国税徴収法第188条 

次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。

一 第141条の規定による徴収職員の質問に対して答弁をせず、又は偽りの陳述をしたとき。

二 第141条の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。

三 第141条の規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出したとき。

(※3) 国税徴収法190条

法人の代表者、代理人、使用人、その他の従業者が、第188条(罰則)の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し各本条の罰金刑を科する。

(※4) 国税徴収法62条

債権の差押えは、第三債務者に対する債権差押通知書の送達により行う。

2 徴収職員は、債権を差し押えるときは、債務者に対しその履行を、滞納者に対し債権の取立その他の処分を禁じなければならない。

3 第一項の差押の効力は、債権差押通知書が第三債務者に送達された時に生ずる。

4 税務署長は、債権でその移転につき登録を要するものを差し押えたときは、差押の登録を関係機関に嘱託しなければならない。

(完)

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